/ちゃちゃさん
 


──あれ・・・?
最初、僕はそれが涙だと気づかなかった。
けれど、それは目尻を伝って、ゆっくりゆっくり滑るように、零れ落ちた。
僕は、いつからこんなに弱くなったのだろう。
何を聞いても、何が起こっても、受け止めることは出来る。そう信じていたのに・・・。
「総司・・・。」
甲府では負けてきた、といっそさばさばした調子で告げた土方さんの声が、戸惑うように宥めるように、僕の名前を呼んだ。
──ごめん。土方さん、ごめんなさい。みっともないところ見せて。
けれど、どこかが壊れたように、涙は止まらない。


「すみません。少し手を、貸してもらえませんか・・・?」
こんな自分は隠してしまいたい。
「総司・・・?」
「みっともない顔・・・、見られたくないから。」
「ばかやろう。」
土方さんの掌が、ふわりと降りてきた。
温かい、掌。

唐突に思い出す。
子供の頃、この掌に慰められた。道に迷った時、手を引かれた。
ケンカの仕方も教わった。
この掌を、この温かさを憶えておこう。
そうすれば、きっとこれからの時間が一人でも、笑っていられる。




                  

またまたイラストで鯛が一匹(*^^*)
ちゃちゃさんが「掌」にショートショートをつけてくださいました。

ふと気付く人の手の暖かさって何にも増して心強い時があります。
多分別れが近ければなおさら・・・。

元は他愛もない妄想の産物に暖かい話をありがとうございました。 ちゃちゃさんm(_ _)m

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なんじゃこれ?と文句言っても責任はとりません(^^;