庭木の向こうで春告げる鳥の声がする。
少し時期を外して来たようなその響きに、あの人を追った日には冷たかった風ももうすっかり柔らかいものになっているのだと改めて気付く。
何が起こっても季節は動き、人の思惑など関係もなく花は咲くのだろう。


「しかし、おめえも存外だらしがねえな。引越しで疲れたか?」
「ちゃんと手紙は届けて下さいよ」
「分かってる。それよりちゃんと寝てろ」
いつも通りの口調で細々と言う土方さんは明日から江戸へ下るのだ。風邪をこじらせたらしいおれは寝間の中。西本願寺に来た頃から咳が酷くなった。
永倉さんなどは押掛けて来た新選組を恨んでる坊主が変なまじないでもかけたんじゃないかと冗談めかして笑っていたが、そんなことで寝ていたらキリがない。



「姉さんへの土産も忘れないでください。それから、江戸から戻る時には・・・」

江戸に届けてもらう手紙にはひと月前に逝ったあの人-山南さんの事も書いた。
ただ、一行だけの短い知らせ。

日野には知った人も多い。皆どんなにか驚き悲しむだろう。だから他には何も書けなかったのだ。
尋ねられたらこの人は何と答えるのだろう・・・。

取り留めのない話を続けながら、あんな知らせしか書けなかった自分をそっと詫びる。


と、目の前が突然暗くなった。


「全く・・・いつまでも話してないで眠れ」
大きな掌で目の前をふさがれてしまい、不満の声をもらす。
「ずるいなぁ。少しぐらい相手してくれてもいいでしょう?」
「ダメだ。体を休めろ。傷も治らんぞ。」
手の暖かさに不意をつかれて、鼻の奥がツンと痺れる。
「大体、お前がだな・・・」
知らず溢れた涙を見られたくなくてその手を掴むと声が途切れた。
「すみません。少し手を貸しててもらえませんか・・・みっともない顔・・見られたくないから・・・」




鳥の声が遠くなる。
何も告げずに春はゆく。




チャットで「イラストの元の妄想話が気になって不眠症になる〜(><)」とイジメてくださったお方たちに。予想でも50ページを超えるマンガは今はとても描いていられないので、さらに落書きと文章でこんな形にしました。
自慢じゃないけど文章滅茶下手の上、訳わかめでぶっちぎってるし、単に断片が広がったようなもんですが、こんなもんで御勘弁を。
顔から火出そうなブツですが 読んで下さった方、ありがとうございます。
しょうもなさには平謝りします m(_ _)m